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内容紹介 『ニルスのふしぎな旅』は今では世界中の子どもたちに愛読される児童文学の古典となっていますが、そもそもはスウェーデンの小学生が読むための地理と歴史の教科書として書かれたものでした。
依頼をうけた作者ラーゲルレーヴは、「地理や歴史にふれながらも、物語として子どもたちが楽しめる本にしたい」と考えました。
ですが、この二つの要素を同時に満たす物語を作るのは至難の業でした。
主人公の男の子をトムテ(小人の妖精)の姿に変えて、ガチョウの背に乗せスウェーデンじゅうを旅させるという発想をえたとき、初めて作者に作品全体の見通しがたったのではないでしょうか。
あとは、読み込んだ多くの文献や取材で得られた様々な素材を、長年鍛え上げた文学的な手法を駆使して、ていねいに描写しながら、物語に生かしていけばよかったのです。
作者は擬人化によってニルスを多くの動物たちと交流させていますが、そこに作り物めいた不自然さを少しも感じさせないのは、命あるもの(自然をも含む)に対する作者の深い信頼感と揺るぎない愛情があったからだと思われます。