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Amazon.co.jp 経営合理化に辣腕をふるった「ミスター合理化」として、また国鉄分割民営化などの行革推進の立役者として、日本経済の発展に寄与した土光敏夫の発言が多数集められた1冊。
とくに経営の革新や改革が叫ばれる状況下では、その一連の言葉が重く響いてくる。
たとえば、「壁がないなんていうのは、問題意識がない証拠だよ。
だから毎日壁にぶつかれとそういうんだ」「問題とは発見され創造されるものなのだ」「問題がないのは望ましいことではなく恐ろしいことだ」という鋭い発言があるほか、「変化することが企業の本質であり、変化に先んじて変化を創り出す企業が必要ではないか」という示唆的な言葉もある。
「問題」や「変化」が起こるのに先んじてそれを求めていくこの発想が、経営合理化の原動力になったとみることもできる。
経営面では、ほかに上司の心得や組織と人の問題に言及したものなどが幅広く収められている。
一方、行革に対する発言も多く、なかでも臨調会長への就任の条件として、首相に「政治生命を賭ける」ことを約束させたり、自民党部会・各省庁の「各論反対」を抑えるしくみをつくらせたりしたエピソードが興味深い。
環境を事前に整え、実行への決断を促す手腕は、改革のよき手本になる。
また、土光の人生について語った部分からは、質素な生活や潔い人生観をうかがい知ることができる。
一大改革を可能にした哲学だけでなく、それを支える思想にも学ぶところは多い。
（棚上 勉）