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Amazon.co.jp 本人は意識していないかもしれないが実は禁欲的、とおぼしきあるマダムは、本書を指差して「うす気味悪い本」といった。
30歳男性のコメントは、「ぞくっと色気を感じます」だった。
全米図書館協会の推薦図書に選定されたり、多くの権威ある書評誌の推薦をもらったりの「優等生絵本」ではあるが、どうも大人は本書に、別の空気の「潜み」を感じるようだ。
たとえば小津映画の傑作『東京物語』の原節子演ずるところの未亡人、彼女を思わせる。
優等生的なんだが、なにか妖しい。
その彼女があるとき、「私、悪い女なんです」と、亡夫の両親にしぼり出すように言う。
映画だからこのようなセリフを言わせたが、本書は表立っては何も語らず、でもどこか同類の妖しさを漂わせる。
いかにもひ弱な男の子と、「かるほるにあ」で生まれ育った母とのある冬のエピソード。
舞台は戦後間もない日本だ。
ある日、母に禁止されていたのに、外に出て庭の池のコイに見とれていたせいで、男の子は風邪をひいてしまった。
母は、それからずっと怒っているようだった。
なにか思いつめているようでもあった。
お母さんが変だ、いい子にしなくちゃ。
男の子は言いつけを守って床に入っている。
と、母が庭から小さな松の木を掘り出し、鉢に植え替えて部屋に持ってきた。
そしてろうそくと折り鶴をそれに飾りつけながら、今日は「くりすます」という特別の日なの、といった。
火がろうそくにともされて、それがこの子の初めてのクリスマスツリーになった。
それは何にもまして美しかった。
折り鶴とろうそくで飾られた初めてのクリスマスツリーを、無邪気に愛でる子、そしてその子を優しく抱く母。
しかしその焦点は、ツリーを通り越してはるか遠く絞られている。
遠いどこか、腕に抱く子のあずかり知らないどこかに。
(おおしま英美) --このテキストは、 ハードカバー 版に関連付けられています。
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2012/11/11 (Sun) 15:56:04
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